
米・トルコ亀裂深まる 地域安保の火種に
米国とトルコの亀裂が深まっている。在トルコ米総領事館職員の拘束をきっかけに両国は8日、ビザ(査証)発給を相互に停止。
シリア情勢などを巡る相互不信の蓄積がビジネスや観光の往来を制限する異例の事態に発展した。トルコの対米強硬姿勢は
経済の混乱を招くばかりか、中東の安全保障にも影を落とす。
「米大使をもはや米国代表とはみなさない」。トルコのエルドアン大統領は10日、外遊先のベオグラードで米外交当局への
不満を爆発させた。アフガニスタン大使に転じるバス大使の離任に際し、自身や閣僚が面会要請に応じていないことも明かにした。
9日のトルコ市場では、米とのビザ発給相互停止の悪影響懸念から、通貨リラ、株式、債券がそろって売られトリプル安となった。
航空大手ターキッシュエアラインズの株価は6日終値に比べ約9%安と急落。10日はやや値を戻したが、9日の下げを埋められていない。
今回の外交危機の直接の引き金は4日、昨夏にトルコで起きたクーデター未遂事件に関連した捜査で、在イスタンブール
米総領事館のトルコ人職員が拘束されたことだ。
これを受け、在トルコ米大使館は8日「米国公館と職員の安全に対するトルコ政府の責務の見直しを余儀なくされた」として、
トルコ国内での永住目的の移住を除く全てのビザ発給業務の停止を発表した。
同日、在米トルコ大使館も米側の声明をほぼ一語一句なぞる形で同様の対抗措置を発表した。過去に発給され、現在も有効なビザの
保持者を除く両国民は観光、商用、留学目的などでの往来ができない事態に陥った。
両国は相互に不信を募らせ、関係が険悪になっていた。トルコは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討でシリアのクルド人勢力を
支援する米国に猛反発。クーデター未遂事件の首謀者とみる在米イスラム教指導者ギュレン師の送還が実現しないことへの反発もくすぶっていた。
クーデター未遂事件後、トルコ当局は南部アダナの米領事館のトルコ人職員、米国人牧師らを相次ぎ逮捕・拘束しており、
エルドアン氏は9月、牧師とギュレン師の交換に言及した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2207937010102017FF2000/